フクロウ42羽死亡――製品の安全確認は、どこで行われたのか
裁判資料と公的評価書から検証する中間報告
動物福祉団体 HOOT 顧問 吉川正二
公開版/2026年9月28日公開
本報告は、訴訟の原告である吉川正二の立場から、現時点で公開可能な資料に基づき、検証すべき主要な問題を整理した中間報告です。第三者による独立調査報告や裁判所の認定を示すものではありません。原告の主張、企業側の主張、裁判所の判断及び公的資料の記載を区別してお伝えします。検証は継続中であり、未公表資料、調査方法及び個別の検討事項のすべてを記載したものではありません。
まず知っていただきたいこと
2021年4月、私が飼育していたフクロウ42羽が、製造を依頼したサプリメント「OWL PRO-MIX」の給与後に死亡しました。私は製品の配合と安全確認に問題があったとして、MPアグロ株式会社とニッチク薬品工業株式会社を相手に損害賠償を求めました。あすかアニマルヘルス株式会社は補助参加人として訴訟に関与しました。
第一審は私の請求を棄却しました。私は控訴しましたが、その後取り下げ、第一審判決は確定しています。控訴審の終局判決は出ていません。 本報告は、この裁判結果を伏せて企業の法的責任が確定したと訴えるものではありません。
それでも、記録を読み直すと、今後の動物被害を防ぐために検証してほしい問いが残ります。
参考製品を示して専門業者に製造を依頼したとき、配合と使用方法の安全性は、誰が、何を根拠に確認するのか。
本報告では、膨大な資料のうち、この問いに関わる三つの事実群と、一つの法的評価上の課題を取り上げます。給与後に死亡が起きたという時間的な経過と、製品が死亡を引き起こしたという因果関係の判断は区別します。
1.「36%」は何を意味するのか
判決は、本件製品について、塩酸ピリドキシンを1kg当たり360gとすることが契約内容だったと認定しています。[2] 原告準備書面(2)も、ビタミンB6含有量を1kg当たり360g、重量の36%と述べています。これは、製品全体の重量の3分の1を超える割合です。以下、数値は資料の表示・記載に従い、塩酸塩の質量とビタミンB6としての換算量、配合規格と完成品の分析値を同一視しません。同じ書面は、参考製品「MVS-30」の実際の含有量を1kg当たり360mgと主張しています。この二つの濃度を比較すると、計算上は1,000倍になります。[1]
ただし、これは書面に記載された二つの製品中濃度の比較です。「通常の必要量の1,000倍」「致死量の1,000倍」、あるいは「各フクロウが1,000倍を摂取した」という意味ではありません。本報告は、原告書面の記載を独立した成分分析の結果として扱いません。
同書面によれば、原告が渡した参考製品のラベルにも360gm/kgという表示がありました。裁判所は、成分の代替・削除等を加えたうえで、提示された成分表と同じ割合で製造する契約だったと認定しています。[1][2] 製造側が、依頼と無関係な数値を一方的に選んだと説明するのは正確ではありません。
検証したいのは、数値がどこから来たかに加えて、その数値を採用する際、専門業者による確認や問い合わせが必要ではなかったかという点です。ニッチクの準備書面(1)は、参考表示 360.00gm を同量としてmgへ換算し、規格書に 360,000.000mg と記載した経過を説明しています。[9] 単位換算自体が数学的に正しいことと、元表示が正しいか、総合剤の36%という完成濃度が妥当かを検証したことは別です。また、事故前の企業間メールには、単位の混在を認識したうえで有効成分合計を約 700mg/kg とする記載もあり、文字どおりならB6一成分 360,000mg/kg と両立しません。700g/kg の誤記だった可能性もあるため、これを設計ミスの原因とは断定しませんが、単位を含む数量照合が必要だったことを示します。[9]
なお、原告書面に記載された給与方法は、約35gを約10Lの水に溶かし、餌をくぐらせ、溶液の7~8割程度を廃棄したというものです。[1] 製品中濃度だけから、個体別の実摂取量や死亡原因を確定することはできません。希釈、餌への付着量、摂食状況、病理所見などとの照合が必要です。
2.参考製品を示すことは、配合の安全性まで引き受けることなのか
私の説明は、「従来使用していたMVS-30と同じような製品を作ってほしい」と依頼し、画像や空き容器は参考資料として渡した、というものです。原告準備書面(2)も、資料の提供は配合の指示には当たらず、専門業者の判断を求めたと主張しています。[1]
一方、判決は異なる評価をしています。契約の内容に加え、原告に長年のフクロウ飼育経験があったこと、成分表記について指示したこと、規格書を確認する機会があったこと、適正な投与量は原告が決める予定だったことなどを考慮しました。製造業者側にフクロウ用飼料の知見・製造経験がなかった点も挙げています。[2]
したがって、判決を「特注品だから製造物責任法が適用されないとした」と要約することはできません。複数の事情を総合し、欠陥を認めなかった判断です。
そのうえで私が検証を求めるのは、飼育経験や参考商品の選択と、配合・単位・使用量の安全性を評価する専門性が、どこまで同じものとして扱えるのかという点です。また、原告の製造過程への関与によって、各事業者に求められる確認や説明の範囲がどのように変わるのかも重要です。ニッチクは私の販売・飼育経験を専門性の根拠に挙げる一方、柄谷氏は、規格を決めたのは自分であり、品質保証部では提示資料どおり再現できるか、バランスが取れるかを確認したと証言しています。[4] 飼育経験を過小評価せず、同時にそれを単位換算、製剤設計、毒性評価の専門性へ自動的に広げない比較が必要です。
「フクロウを知らない」と「高配合への確認が不要」は別ではないか
ここには、もう一つ重要な点があります。判決9頁は、ニッチク担当者が塩酸ピリドキシンの量を少し多いのではないかと感じたものの、顧客から指示された成分であることや、ニッチクが取り扱う牛用飼料に顧客からの指示によりビタミンB群が80%含まれているものもあることから、量を変更しなかったと認定しています。[2]
つまり、単に私が「製造のプロなら疑問を持つはずだ」と推測しているだけではありません。製造担当者に、実際に配合量への疑問が生じていたことを、判決自身が認定しています。
私の問いは、フクロウ固有の致死量を知っていたかだけではありません。飼料製造の専門家として、360g/kgという配合に抱いた疑問を、どのような確認によって解消したのかということです。牛用飼料のB群の含有割合を、フクロウ用製品のB6単体の配合判断に用いるなら、対象動物、成分の範囲、希釈や給与量の違いをどう検討したかが重要です。割合だけの比較では、本件の安全性は判断できません。なお、判決9頁の比較対象は、判決の記載どおり「ビタミンB群が80%」含まれる牛用飼料です。訴訟資料の別の箇所に現れる別成分(B3やB7)の割合を示す製品と同一かどうかは確認しておらず、相互に置き換えて評価しません。
同じ判決は、企業側が危険な量と判断した成分を変更したこと、給与量は原告に決めてほしいと留保しながら「1日当たり1羽につき小匙1杯」が無難ではないかという案を伝えたことも認定しています。[2] そのため、「企業側は何も検討しなかった」「知識の限界を全く伝えなかった」とは述べません。問うべきなのは、実施した検討と説明で何が確認され、何が未確認のままだったかです。
量を多いと感じたことは、有害性を知っていたことや死亡を予見していたことと同じではありません。また、ニッチク担当者の疑問があすかやMPアグロへ伝わっていたかも別途確認が必要です。それでも、フクロウの知見不足を理由にするだけでは、製造専門家として配合量を再確認する必要性がなかったことの説明にはならないと考えます。他方、成分ごとに性質が異なるため、他成分を減らしてB6を維持したことだけでは矛盾とはいえません。検証対象は、判断が違うこと自体ではなく、その違いを支える根拠です。さらに、ニッチクの2021年5月19日回答は、システム連携を理由に「製造物と表示・規格書との最終チェックの工程は省かれています」と記載しています。[10] これは他の品質保証試験まで存在しなかったことを意味しませんが、完成品、表示及び規格書を直接照合する工程が省かれていたという企業自身の説明です。
これは本報告の問題提起であり、裁判所が認めた義務違反ではありません。安全確認の不足を指摘することと、製品の欠陥や死亡との因果関係を立証することも区別します。
給与量の留保と具体的な案内は、どう受け止められるか
判決9~10頁は、ニッチク側が給与量の決定を原告に求めながら、担当者が個人的に調べた量として具体的な案を示し、そのメールがMPアグロを通じて原告へ転送されたことも認定しています。[2] 「分からない」という留保と、調べたうえで具体量を示すことは両立し得ます。しかし、それを受けた顧客が、どの範囲まで安全性を検討した案と理解するかは、別の問題です。小匙1杯を一律に5gへ換算したり、その案を実際の給与方法・実摂取量と同一視したりはしません。事故前メールでは、ニッチク側は「推奨給与量はわかりません」「依頼者の方に決めて頂きたい」と述べる一方、110gから1,100gまでのフクロウに一律「小匙1杯/羽/日」が無難ではないかと回答し、「コップ1杯に小匙1程度」で混ぜることも可能と説明しました。[11] 使用方法と量に企業側が全く関与しなかったとはいえませんが、事故時の35g/水10Lという方法を指示・承認した証拠でもありません。
契約について、判決12頁は、20kg・9万8,000円の取引であったこと、MPアグロ自身は原告以外に販売する予定がなかったこと、内容へのクレームを受けない旨のメールに原告が意見を述べなかったことなどから、多額の費用をかけて安全性を確保する契約上の合意を認めませんでした。[2] ここでいうMPアグロの販売予定と、私が第三者へ販売する計画を持っていたかは、同じ事実ではありません。2021年2月25日の企業間メールには、私が本製品の転売も視野に入れているとの記載があり、企業側が下流販売の計画を事故前に認識していたことが確認できます。[11] ただし、転売は検討段階であり、実際の販売先、数量、開始時期は確認できません。
私がなお問いたいのは、高額な安全性試験を約束していなかったとしても、配合量への疑問を問い合わせることや、提示した給与量案の根拠・限界を説明することまで不要になるのかという点です。判決は付随的な指摘義務も検討して否定しています。理由が一切ないという批判ではなく、その理由が実際の疑問・案内・依頼に十分対応しているかを検証するものです。[2]
対象動物を絞った経緯と、説明書の提供依頼
ニッチクの柄谷氏は尋問調書17~18頁で、あすか側の坂井氏へ名称をフクロウにするよう伝えたこと、規格を決めたのは自分であることを述べています。一方、顧客・あすかとの最終的な共有も説明しています。また、17頁では、総合サプリメントとの表示は顧客又はあすか側の指示を反映したもので、ニッチクが総合サプリメントを意図して製作したわけではないとも述べています。名称の提案、規格決定、製造目的の認識は分けて読む必要があります。したがって、私の最終了承と、製造側による対象設定・規格形成への働き掛けを区別する必要があります。全てをニッチクが単独決定したという意味ではありません。成分設計についても、事故前の顧客向けメールは「亜セレン酸ナトリウム→セレン酵母」と説明して確認を求めましたが、裁判提出された成分検討表ではセレン酵母が0とされ、ニッチクは訴訟でセレン源を除外したと説明しています。[12] 後日の設計変更や別の訂正連絡、実配合は未確認です。それでも、顧客が示された「代替」の説明と、裁判資料上のゼロ設計・除外は一致しないため、規格書の受領を企業内部の全設計判断への了承へ広げることはできません。
2021年3月1日のMPアグロの赤松氏とのDMには、別メーカーの説明書の写真と、このような説明書が欲しいという依頼もあります。写真はNEKTON-Eの説明書であり、別途検討中のNEKTON-S資料や、配合を同じにする指示とは区別します。画像には与え方・使用上の注意・成分表示があり、私は「別のメーカーのビタミン剤の説明書です。この様なものが欲しいのですが。」と送っています。同じ会話には私の「フクロウ用でいきましょう」との返信もあります。この了承を隠さず、誰が限定を提案したか、誰が安全性を判断したかと区別します。赤松氏の「分かりました」は名称のやり取りの後にあり、説明書添付の合意や安全保証まで確定する回答とは扱いません。[4]
検証したいのは、対象動物や規格を具体化する過程への製造側の関与と、その動物への使用条件・安全性を何に基づいて判断し、何を説明したかの関係です。対象限定への関与だけで、製品の欠陥、法的責任、死亡との因果関係が確定するわけではありません。[4]
3.人が食品を食べた場合の評価は、直接給与されたフクロウの安全性を示すのか
判決は、ピリドキシンに関する食品安全委員会の評価に言及し、当時の危険性に関する知見を判断の一要素としています。[2]
判決11頁も、大量投与による場合を除くという限定を記載しています。したがって「判決が毒性の例外を全く書かなかった」とは批判しません。他方、13~14頁では危険性の認識や欠陥を否定する理由に、当時の危険性に関する知見を用いています。本件の配合と予定された使用を、その大量投与の例外との関係でどのように評価したのかが、検証すべき接続部分です。[2]
同委員会の2013年評価書の結論は、動物用医薬品・飼料添加物として通常使用される場合の、食品残留を通じた人の健康影響についてのものです。一方、本文6頁には犬への300mg/kg体重/日の経口投与による重篤な運動失調が記載されています。7頁の50mg/kg体重/日の群は、臨床症状を示さなかった一方、病理学的変化が記載されています。両者を同じ症状の出た群として扱いません。[3]
私が重視するのは、この区別を判決後に初めて指摘したわけではないことです。原告準備書面(2)では、食品を摂取する人への影響と、過剰摂取した動物自身への影響は異なると主張し、評価書の完全版を甲16として提出すると記載しています。[1] さらに判決後の2026年6月15日、食品安全委員会事務局は照会への回答で、この評価書は「食品に残留したピリドキシンが食品を介して人の健康に及ぼす影響」について取りまとめたものだと説明しました。[5] この後日の回答を「裁判所が無視した証拠」とは扱いません。第一審当時に提出済みだった甲16と原告準備書面の読み方を、評価主体が後から確認した補強資料として位置付けます。
評価書の結論を、そのまま36%製品を直接給与されたフクロウの安全性の証明とすることはできないと考えます。ただし、別種の動物への高用量投与で毒性がみられたという記録も、それだけで本件の死亡原因を証明するものではありません。
第一審に提出された甲15のハヤブサ類試験では、B6を単回経口投与した50mg/kg群と75mg/kg群は各4羽全羽が24時間以内に死亡し、25mg/kg群は症状なく生存しました。[13] これはフクロウの確定致死量ではありませんが、高用量でも水溶性だから問題ないという推論に対する具体的な警告資料です。事故後、検索語を「フクロウ」から「猛禽類」へ広げてこの論文に到達したとの説明も、5月11日の提出反訳に残っています。事故前に必ず発見できたことの完全証明ではありませんが、文献確認可能性を検討する材料です。[13]
本件で病理解剖された2羽について、病理医は共通する肝障害による急性死亡を推定し、中毒の可能性を疑い、感染症を積極的に疑う病原体・所見は確認されないと記載しました。また、猛禽類B6中毒文献との病変の一致を指摘しています。[14] しかし、感染症を完全に除外したとの記載ではなく、検査対象は2羽です。これだけで42羽全ての唯一の死因は確定しません。ニッチク自身の書面もB6過剰摂取による死亡可能性や中毒死の場合を仮定して責任を争っており、B6中毒は双方が具体的に扱った検証仮説です。[15]
検証してほしいのは、評価の対象、動物種、投与量、使用条件の違いを、判決と当事者の主張がどう扱っていたかです。
4.欠陥判断と「開発危険の抗弁」は、どう分けて検討されたのか
原告準備書面(2)は、製造物責任法4条1号を明示し、引渡時の科学・技術知見によって欠陥を認識できなかったという免責事由が成立しないと争っていました。[1] 法4条本文は、製造業者等が各免責事由を証明したときに免責されると定め、消費者庁の公式Q&Aも同じ構造を説明しています。[7]
一方、第一審判決は、法4条1号を独立した免責判断として示していません。判決13~14頁は、①不特定多数への販売を目的としない特注品という特性、②原告の製造過程への関与の程度、③規格書の送付・確認と、投与量を原告が決める予定だったこと、④引渡時に塩酸ピリドキシンを動物へ投与する際の危険性が指摘されていたとは認められないという知見の状況を考慮し、「通常有すべき安全性」を欠いていたとはいえないとして欠陥を否定しました。危険性を認識できたかどうかは、MPアグロの付随義務の判断(13頁)で検討されています。[2]
ここには二つの見方があります。法2条2項は、製造物の特性、通常予見される使用形態、引渡時期その他の事情を総合考慮するため、引渡時の科学的知見を欠陥判断で考慮すること自体が直ちに法令違反になるとはいえません。他方、引渡時に危険性が指摘されていなかったという知見の状況を欠陥判断の考慮要素とすることで、法4条1号が製造業者側に置いた抗弁・立証責任が実質的に軽くならなかったか、という検証課題は残ります。
本報告は「明白な法令違反」と断定しません。問うのは、36%という配合、担当者自身の疑問、甲16の高用量毒性、本件の予定使用という具体的事情を踏まえても、引渡時の知見の状況を欠陥判断内で考慮し、欠陥を否定した理由が十分に説明されているか、そして法4条1号との役割分担が保たれているかです。
追加検査を実現する難しさと、検体・遺体の保管
追加検査が必要であることは、私自身も理解しています。しかし、私の場合、病理解剖を引き受けていただく段階から、受入先を確保することに大きな苦労がありました。今後、さらに解剖して検体を採取し、必要な検査を受け入れてもらえる国内機関を確保できるかは、現時点で見通せていません。これは私が経験した経過であり、日本の獣医師や研究機関全体が検査を拒んでいるという意味ではありません。[6]
2026年9月27日現在、私の把握では、病理解剖を実施した機関に肝臓を保存していただいています。私自身も、死亡した全個体の遺体をマイナス60度で保管し続けています。将来の検証の可能性を残すためです。これらは私自身による現在の保管状況の説明であり、受入機関による最新の保存証明や、保管期間全体の温度記録を本報告に添付しているものではありません。どの検査が可能か、結果をどう評価できるかは、検体の状態や保存履歴を踏まえた専門機関の判断を要します。[6]
海外での検査も、受入先だけでなく、動物種や検体に応じたCITES(ワシントン条約)上の手続、相手国の条件、検体の状態を保った輸送の実現性を確認する必要があります。「海外へ送れば直ちに解決できる」とも、「条約によって検査目的の移送が一律に禁止される」とも述べません。[8]
検証を依頼する際には、当事者企業・グループ企業との関係や資金提供の有無などを確認し、分析の独立性と透明性を確保したいと考えています。特定の機関に不正や検査妨害があったと主張するものではありません。
追加検査が難しいこと自体は死因の証明ではありません。しかし、検証には受入先・検体・輸送・独立性という現実の条件があります。未解明部分が残ることと、検証を求めずに放置してきたことは同じではありません。 独立した立場から、追加検査の可能性や方法について助言・協力いただける獣医師、研究機関、分析機関からの情報を求めています。
原告側の行為も検証対象にする
補助参加人は、少数羽で試さず一斉に給与したことを原告側の義務違反として主張しました。[1] 事故前に、企業側から段階的導入、観察期間又は中止基準が示された記録は確認できません。それでも、新製品を多数羽へ同時に導入したことは、事故予防や過失割合を考える際の反対事情として隠すべきではありません。
また、2021年3月12日の企業間メールでは、坂井氏が顧客からの要望として、「防護具(マスク眼鏡手袋)を着用して粉塵を吸わないように」とする使用上の注意の削除を柄谷氏へ伝え、柄谷氏が業者向けの労働安全表示で個人向けには不要と確認して削除しています。[11] これは表示形成への私側の関与を示す企業間記録です。ただし、作業者の粉塵曝露に関する表示と、フクロウへの経口給与量・毒性の警告は別の問題です。
判決を踏まえても、なぜ検証を求めるのか
第一審は、契約内容や製造過程への関与、投与量の決定、引渡し時の知見等を考慮して欠陥を否定し、他の点を判断するまでもなく製造業者に対する請求を棄却しました。[2] 「企業の責任が認定された」とも、「全ての科学的な疑問が解消された」とも表現すべきではありません。
動物福祉の観点では、被害を防ぐための安全確認と使用説明が重要です。報道・研究の観点では、同じ資料に対する当事者と裁判所の評価の違いを検証できます。金融・企業統治の観点では、特注製品の承認、取引先間の情報共有、品質管理の役割分担が検討対象になります。ここで企業集団の他社の責任や、投資上の影響を断定するものではありません。
続報で扱う課題
提出反訳では、私が発注時に北海道のフクロウ死亡事例を赤松氏へ伝えたと述べ、赤松氏が「北海道の」と応答したこと、赤松氏が坂井氏へポポンSの話を電話で伝えたと述べたこと、坂井氏がニッチクへ知見の有無を問い合わせたと説明したことが確認できます。[16] ただし、各伝達の正確な日時、全文、受領者、製造前に下流まで到達したかは確定していません。製造前に下流まで到達していたなら警告後の定量確認が問題となります。事故後に初めて下流へ伝わったのなら、取引窓口で受けた警告が製造前に共有されなかったことが問題となります。どちらかを断定しません。未確認事項は確定的な事実として記載していません。
企業側の説明に有利な資料も検討し、記載の訂正が必要になった場合には、変更内容と日付を示します。
検証の範囲と限界
本稿は、現時点で公開可能な資料から確認できる主要な問題を整理したものです。未公表資料、調査方法及び個別の検討事項のすべてを示すものではなく、企業の故意、裁判官の意図、不正又は42羽全ての個別の死因を確定するものでもありません。新たな資料や確認結果により訂正が必要となった場合は、変更内容と日付を明示します。
出典・取材窓口
[1] 原告準備書面(2)、令和5年1月11日付。第2の1(含有量、給与方法、公的評価書、ラベル)、第3の1・2(参考製品の含有量、契約と指示)及び第5(補助参加人の原告側義務違反主張への反論)。原告の訴訟上の主張であり、それ自体が主張の真実性を確定する資料ではありません。
[2] 大阪地方裁判所判決、令和4年(ワ)第3255号、紙面8~10頁(受注、成分変更、B6量への疑問、給与量案と留保)及び11~14頁(科学的知見、契約、付随義務と欠陥判断)。本報告の要約は判決理由の全てを再現するものではありません。
[3] 食品安全委員会「対象外物質評価書 ピリドキシン」、2013年4月。紙面3頁、6~7頁、9~10頁。公式評価書。
[4] 柄谷氏尋問調書、紙面13頁及び17~18頁。赤松氏とのDM保存画像IMG_3447・3448(2021年3月1日の説明書依頼と、その後に続く名称・対象のやり取り)。
[5] 食品安全委員会事務局「ピリドキシン(ビタミンB6)評価書に関する照会に対する回答」、2026年6月15日受信。判決後資料であり、評価書の対象範囲に関する現在の補強資料として用いる。
[6] 吉川正二による2026年9月27日の説明。検査依頼の困難、機関による肝臓の保存、本人による遺体の保管状況についての本人申告。
[7] 製造物責任法2条・4条(e-Gov法令検索)及び消費者庁「製造物責任法の概要Q&A」。個別事件への適用は裁判所の判断に委ねられるため、本報告は法令違反を断定しない。
[8] 経済産業省「ワシントン条約規制対象貨物の輸出承認手続き」。一般的な手続案内であり、本件の個体・検体について輸出許可又は検査可能性が確認されたことを意味しません。
[9] ニッチク準備書面(1)、2022年7月13日付、紙面5頁。2021年2月10日坂井氏→柄谷氏メール及び同月17日返信・添付規格書。700mg/kg は原文表記であり、誤記の可能性を留保します。
[10] ニッチク「フクロウ死亡に関する回答書」、2021年5月19日付、No.9。事故後回答であり、他の品質保証工程の不存在まで証明するものではありません。
[11] 2021年2月25日柄谷氏→坂井氏、同年3月1日赤松氏→吉川氏、同年3月12日坂井氏・柄谷氏間の各電子メール。推奨量の留保、具体案、水混合、転売予定、表示削除をそれぞれ別事項として読みます。
[12] 2021年2月17日・22日メール、丙1の4成分検討表、ニッチク準備書面(1)5頁。実配合及び訂正連絡の有無は未確認です。
[13] Samourほか「Vitamin B6 (Pyridoxine Hydrochloride) Toxicosis in Falcons」、Journal of Zoo and Wildlife Medicine 47(2): 601–608, 2016、紙面605~606頁(甲15)。甲29の1・紙面13~14頁。
[14] 甲8の1~3。病理検査結果の送付メール及び2羽の病理検査報告。2羽の所見であり、42羽全ての個別死因の証明とは扱いません。
[15] ニッチク準備書面(2)7頁、被告最終準備書面(ニッチク)11~12頁。仮定的・予備的主張と死因の無条件承認を区別します。
[16] 甲29の1・紙面15頁、甲30の1・紙面3頁、甲31の1・紙面2~3頁。提出反訳であり、伝達時期・全文・受領者の限界を本文のとおり留保します。
冒頭の被害経過及び控訴取下げの経過は吉川本人の説明に基づきます。記載した資料の照会は下記窓口で受け付けます。資料ごとの提供範囲は、個人情報等を確認のうえ判断します。
動物福祉団体 HOOT 顧問 吉川正二
メール:moukinclub@gmail.com
資料の照会、専門的な検討、記載に対する反論・訂正情報をお寄せください。非公開資料や第三者の個人情報を含む資料は、提示の可否と範囲を個別に確認します。
