フクロウ事件について――サプリメントの製造経緯、裁判、現在の検証

2021年4月、私がフクロウたちのために製造を依頼したサプリメント「OWLPRO-MIX」を与えた後、死亡や嘔吐などの異常が相次ぎました。第一審判決が認定した死亡数は42羽です。

私は、販売窓口のMPアグロと製造元のニッチク薬品工業に損害賠償を求めましたが、第一審は両社の法的責任を認めず、請求を棄却しました。その後、私が控訴を取り下げたことで、この判決は確定しています。ただし、判決は製品と死亡との因果関係についての判断には進んでいません。

現在、私は、製造前後のメール、録音、規格書、裁判資料を照合し、何が起き、どのような説明と判断が行われたのかを検証しています。このページでは、資料に残る経過と、私自身の説明・問題意識を区別して記します。

設計の元となったのは、イギリス製の動物用総合サプリメント「MVS-30」でした。私は以前からこの製品を使用しており、同様の目的で使える製品の製造をMPアグロに相談しました。

ニッチク薬品工業の被告最終準備書面11頁には、2021年5月11日の面談での私の事後説明として、MVS-30の本来のビタミンB6含有量は360mg/kgで、提供したラベル写真の「360.0gm」は誤表記だったと記載されています。一方、国内製品の規格書には、塩酸ピリドキシンの製品含有量が1kg当たり360,000mgと記載されています。これは360g/kg、製品全体の36%に相当します。360mg/kgと360,000mg/kgという記載値を比較すると1,000倍です。これは記載値同士の比較であり、毒性や死亡危険の倍率を示すものではありません。この配合量の問題と、それが死亡にどう関係したのかという問題は、分けて検証する必要があります。

私は製造を相談した際、成分表が本当に正しい内容なのかを、MPアグロの赤松氏に尋ねました。この相談については、事故後の2021年5月11日の説明会で、赤松氏本人に問いかけながら振り返っており、その説明が録音に残っています。

その場で私は、成分表がレシピのようなものなら、誰でも同じ製品を作れるのではないかと疑問を示したことを説明しています。また、赤松氏から、メーカーが違った数字を記載することはないが、表示されていない成分はあるかもしれないという趣旨の回答を受け、製造を依頼した経過を述べています。成分量の多い・少ないは自分では判断できないこと、企業側から酸化防止剤について説明を受けたことで、さらに安心したことも話しています。

製造を依頼する際には、北海道の動物園で人間用ビタミン剤を与えた後にフクロウが死亡した事例を伝え、安全への配慮をお願いしました。原因が特定されていない事例でしたが、人間用は成分量が多いからではないかとの記載があったことも伝えました。この事前の伝達についても、4月12日、5月11日、5月12日の録音に関連するやり取りが残っています。

製品化の検討は、MPアグロ、あすかアニマルヘルス、ニッチク薬品工業の間で進められました。

2021年2月9日、赤松氏から、あすかアニマルヘルスの坂井氏へMVS-30のラベル写真が送られました。翌10日、坂井氏は、ラベルを基に作成したExcelをニッチク薬品工業の柄谷氏へ送りました。そのメールでは、英語表記でg・mg・%などの単位が混在していることを挙げ、自分なりに調べた内容が正しいか、原料を取り扱っているかを確認していました。

2月17日、柄谷氏は、Excelに検討内容を追記し、製品内容と製造工程を何度か見直した旨を記して、見積書・規格書・ラベルを坂井氏へ送りました。同日、規格書とラベルが坂井氏から赤松氏へ送られています。この段階で、企業間の資料には既に「ふくろうMIX」という名称が使われていました。

私への最初の規格書送付として資料に残っているのは、2月22日16時33分の赤松氏からのメールです。2月17日付の規格書とラベルが添付され、このメールと添付資料は、甲第4号証の1~4として裁判所に提出されています。

このメールでは、ユッカ抽出物・BHT・BHAの削除が既に説明されていました。ユッカ抽出物は適量不明と過剰時の副作用への懸念、BHT・BHAは多量時の危険が理由とされていました。一方、この時点の規格書にはガーリック粉末が残っていました。

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規格書を受け取った後、私は、ガーリックの削除、成分表示の簡略化、他の猛禽類にも使える対象表示、推奨給与量、水への溶け方、粒子の細かさなどについて質問しました。これらは2月25日の坂井氏から柄谷氏へのメールに記録されています。

同日、柄谷氏はガーリックを削除すると回答しました。推奨給与量については、分からないと述べながら、小匙1杯/羽/日が無難ではないかという考えを示しました。また、対象表示については、猛禽類用という表現は可能としながら、適正値が分からない商材はなるべく対象を絞っておきたいという方針を示しました。この方針は翌26日に坂井氏から赤松氏へ伝えられています。

私は当初、元のMVS-30と同様に、フクロウ以外の動物への使用も考えていました。企業側の判断を信頼し、最終的にフクロウ用とすることを了承しました。3月1日のメッセージには、私が「フクロウ用でいきましょう」と応じ、赤松氏が「分かりました。」と返信した記録があります。その後、商品名は「OWLPRO-MIX」、種類は「フクロウ用総合サプリメント」とされました。

このように、企業側の設計・成分選択・規格書作成が先にあり、その後に私からの質問や変更要望、対象・名称についての了承が続いています。私が最終的な対象表示を了承したことと、企業側がそれ以前に行った検討は、区別する必要があります。

製品は2021年4月10日に到着し、私は同日、サプリメントを付けた餌を与えました。翌11日12時41分、赤松氏へ死亡や嘔吐などの異常を連絡しました。そのメッセージには、前日に元気だったフクロウたちに与え、翌朝に異常が生じたことを記しています。

4月12日午前、赤松氏が来店しました。その録音では、MVS-30を基に一部の材料を変更したこと、ニッチク側が設計について調べ、フクロウに使わない方がよい成分を除外した旨を説明しています。企業側が設計や成分の検討に関与したという説明は、事故直後の記録にも残っています。

同日午後には、赤松氏と坂井氏が来店しました。私はビタミンB6が1kg当たり360gという量について質問しました。坂井氏は、使用しているものは認められた飼料添加物であることや、元の資料と同じであることを説明しました。一方、フクロウ用のプレミックスを作った経験がないとも述べ、改めて確認すると回答しています。

この午後の録音では、私が両氏の面前で、北海道でビタミン剤を与えてフクロウが死亡した事例を、以前MPアグロ側へ伝えていたことも述べています。

5月11日には、三社の関係者が出席する説明会が開かれました。柄谷氏は、フクロウやその餌について調べ、不足する部分を補って健康を維持するという理解で内容を見直した旨を説明しています。また、ビタミンB6の量が多いとは考えたものの、水溶性で尿中に排出されるという理解であったことも説明しています。

私はこの説明会で、先に述べた成分表の正確性についての相談を振り返るとともに、発注時に赤松氏へ北海道の死亡事例を話したことを確認しました。赤松氏が北海道の事例に言及して応じたやり取りは、甲第29号証の1として提出された反訳書にも記載されています。

翌5月12日、赤松氏との電話では、坂井氏へ電話でポポンSの話を伝えたかという私の質問に、赤松氏が肯定しています。同日の坂井氏との電話でも、赤松氏から聞いたこと、ニッチクへ電話で伝えたことについて肯定する応答があります。これらは、甲第30号証の1、甲第31号証の1として提出された反訳書にも残っています。ただし、各社間で伝えた正確な日付までは、これらの応答だけでは特定できません。

事故後、私は説明とともに企業間メールなどの提供を求め、製造に至る経過を確認していきました。その後、代理人を立て、企業側との話合いによる解決を目指しました。しかし、私の認識では、代理人を立てた後も企業側からの連絡がなく、話合いが進まない状態が続きました。当時は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、提訴までに時間を要しました。

こうした経過を経て、2022年4月19日、私は大阪地方裁判所に提訴しました。MPアグロに対しては契約に基づく債務不履行責任を、ニッチク薬品工業に対しては製造物責任法に基づく責任を問いました。あすかアニマルヘルスは、両被告の補助参加人として訴訟に参加しました。

裁判では、安全性を備えた製品を供給することが契約内容に含まれていたか、危険性を指摘すべき義務があったか、製品の含有量が製造物責任法上の欠陥に当たるかなどが争われました。私は、フクロウの飼育経験と、栄養成分の配合や安全性を判断する専門知識は別であると主張しました。

2023年6月8日の尋問では、柄谷氏が自ら規格を決めた旨を供述しました。一方、赤松氏は、北海道の死亡事例を初めて聞いた時期について、製造後の3月中旬以降だったと思う旨を供述しました。発注時に伝えたという私の説明と、この供述との関係は、事故後の録音と照合して検証している点の一つです。

2023年10月4日、第一審は私の請求をいずれも棄却しました。

判決は、契約の内容を、一定の成分を代替・削除したうえで、元の成分表に沿った原料と割合で製造・販売する合意と認定しました。安全性を有する製品を販売するという私の主張は認めず、MPアグロの危険性を指摘する義務も認めませんでした。

ニッチク薬品工業についても、特定の注文に基づく製品であったこと、私の飼育経験や製造過程への関与、規格書や給与量に関するやり取り、当時の知見などを考慮し、製造物責任法上の欠陥を認めませんでした。こうして責任を否定したため、死亡との因果関係や損害額についての判断には進んでいません。

私は同年10月18日に控訴しました。2024年2月8日の控訴審第1回期日で口頭弁論が終結し、判決期日は4月25日とされました。その後、和解などの解決方法が提案されましたが、私は判決を求めました。

最終的に、私は控訴を取り下げることを選び、2024年4月2日に取下書が提出されました。控訴審の判決は出されず、第一審判決が確定しました。私自身としては、第一審の判断に納得したためではなく、裁判を続けるよりも、資料に基づいて事実を明らかにしていくことを選んだものです。

現在の検証では、企業側が実際に行った設計や成分選択と、私が行った要望・了承が、裁判でどのように評価されたのかを確認しています。成分表の提供や規格書の受領、名称・表示への要望が、配合量の安全性を理解して判断したことと、どう結び付けられたのかという問題です。

また、北海道の死亡事例について、私から取引窓口への伝達と、その後の企業間の情報共有を分けて確認しています。録音に残る企業側の説明と、法廷供述や判決理由がどのように対応しているかも検証しています。

製品の安全性については、水溶性ビタミンに関する一般的な説明と、フクロウに与える具体的な成分量・給与量についての根拠を区別して調べています。これらは、個々のメール、録音、規格書、裁判資料に立ち戻って確認する必要がある問題です。

私がこの事件を記録し、公開する目的は、亡くなったフクロウたちに何が起きたのかを資料に基づいて明らかにし、同じような事故を防ぐことです。裁判所が認定した事実、メールや録音に残る内容、私自身の説明と評価を区別しながら、検証を続けています。